公的活動2018年4月19日

埼玉消費者被害をなくす会と株式会社NTTドコモの判決について

株式会社NTTドコモ

消費者庁・公式記録ID case-352-1

公表内容

事案の内容:本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人埼玉消費者被害をなくす会(以下「原告」という。)が、携帯電話の利用に係る通信サービス等の提供を目的とする株式会社NTTドコモ(以下「被告」という。)に対し、被告が不特定かつ多数の消費者との間でXiサービス契約及びFOMAサービス契約(以下「本件各契約」という。)を締結するに当たり、消費者契約法(以下「法」という。)第10条(※)に規定する消費者契約の条項に該当する約款変更に関する契約条項(以下「本件変更条項」という。)を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示を現に行い又は行うおそれがあるなどと主張して、被告に対し、法第12条第3項の規定に基づき、本件変更条項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示の停止を求めるとともに、これらの行為の停止又は予防に必要な措置として、本件変更条項が記載された本件各契約に係る契約書の用紙を廃棄すること及び当該廃棄を指示する書面を従業員に対して交付することを求めた事案である(平成29年1月25日付けで東京地方裁判所に訴えを提起)。(※)消費者契約法(消費者の利益を一方的に害する条項の無効) 第十条 民法、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。 (注)上記の訴えが提起された日現在の規定 結果:東京地方裁判所は、平成30年4月19日、以下のように判断した上で、原告の請求を全て棄却した(原告は、平成30年4月27日付けで東京高等裁判所に控訴した。)。 当該裁判の主たる争点:ア 主たる争点 本件変更条項が法第10条に規定する消費者契約の条項であるといえるか。イ 主たる争点についての裁判所の判断① 本件変更条項は、原告の主張する法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して、消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項である(法第10条前段)といえるか 法第10条前段所定の「法令中の公の秩序に関しない規定」、すなわち任意の規定には、明文の規定のみならず、一般的な法理等も含まれると解するのが相当である。 そして、契約当事者は、当事者間で合意した契約内容に拘束される一方で、合意していない事項については法的に拘束されず、契約内容を変更する場合にはその旨の合意をして初めて変更後の契約内容に拘束されると解釈するのが、私的自治の原則からの帰結であり、その意味で、上記解釈は一般的な法理等に当たるものというべきである。そうすると、本件変更条項は、契約の一方当事者である被告に対し、他方当事者である契約者(消費者)の個別の同意のないまま契約内容を変更する権限を与えるものであるから、契約者が自己の同意していない変更後の契約内容に拘束されるという意味において、一般法理等である上記解釈に比して消費者の義務を加重するものに当たるというべきである。 なお、被告は、裁判例や民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)による改正後の民法(以下「改正民法」という。)第548条の4第1項の規定に照らし、契約の一方当事者は、個別に相手方と合意することなく、合理的な約款変更をすることができるという一般的な法理が確立している旨主張するが、現時点において、合理的な約款変更であれば相手方の合意がなくてもすることができるとの一般的な法理が確立しているとまでいうことはできない。② 本件変更条項は、原告の主張する民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの(法第10条後段)に当たるか ㈠ ある条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かは、法の趣旨、目的に照らし、当該条項の性質、契約が成立するに至った経緯、消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考量して判断すべきである。 本件各契約は、携帯電話の利用に係る通信サービス契約であり、不特定多数の相手方に対して均一な内容の給付をすることを目的とし、被告の契約件数が7000万件を超えるものである。このような本件各契約においてその内容を変更するために常に契約者の個別の同意が必要であるとすると、その意思確認をするためのコストや同意の有無により提供すべきサービスの内容に差異が生じることに伴うコストが増加する結果、契約者が負担するサービス利用料が増加し、ひいては相手方に対して均一な内容の給付をするという上記の目的を達成すること自体が困難になるおそれがある。 また、上記のとおり、本件各契約は携帯電話の利用に係る通信サービス契約であって、契約者全員が携帯電話機を所持していることからすると、携帯電話機や通信に係る技術革新等に応じて、高い頻度で契約内容を変更する必要が生じることが推認される。 これらの事情によれば、携帯電話の利用に係る通信サービスを提供する事業者である被告にとって、契約者との間の本件各契約の内容を画一的に変更する必要が生じた際に、契約者の個別の同意を得ることなく契約内容を変更する必要性は高いのみならず、このような変更は上記のサービス利用料の増加等を回避でき、不特定多数の相手方に対する均一な内容の給付を可能にするという意味において、これらの者にとっても利益となる面がある。 ㈡ 本件変更条項により、契約者は、自己が個別に同意していないにもかかわらず変更後の契約内容に拘束されることになるのであるから、そうした意味で一定の不利益を被ることは否定できない。 しかしながら、約款の変更は、携帯電話の利用に係る通信サービス契約の目的に反し、又は変更の必要性、変更後の内容の相当性その他の変更に係る事情に照らして不合理なものであるなど、公序良俗に反すると認められる場合には、民法第90条の規定により無効となる。また、変更後の約款は、その内容が任意規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は義務を加重するものであり、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものである場合には、法第10条の規定により無効となる。 このように、本件変更条項が存在するからといって、上記のような約款変更が当然に有効となるわけではなく、本件変更条項により有効になし得る約款変更は上記の各場合に当たらないものに限られるから、本件変更条項により契約者が被る一定の不利益は重大なものであるとはいえない。 ㈢ さらに、被告は、情報通信機器の普及率が急速に高まる中、環境保護の取組の一環として紙媒体の発行数の更なる削減を目的として、契約者に対する利用料金等の通知方法を原則としてeビリングによることとし、あわせて、インターネット機能の提供を受けており、利用料金の支払方法を口座振替又はクレジットカード払にすることでeビリングにより利用料金等を確認できる契約者が、なお紙媒体の請求書等の発行を受けることを希望する場合には、その発行に係る費用(印刷費・郵送費等)の一部を徴求することとし、本件手数料条項を置いたことが認められる。したがって、本件手数料条項は、その目的が不当、不合理であるとか、携帯電話の利用に係る通信サービス契約の目的に反するなどということはできないばかりか、紙媒体の請求書等の発行を受ける契約者についてのみ生じる費用を同人に負担させることは、契約者間の公平にもかなうものであって、内容も相当なものである。また、被告は、本件手数料条項が追加された本件各契約の約款が適用される半年以上前から契約者に対し、ウェブサイトにおける公表や説明文書の郵送等、様々な方法で本件手数料条項の周知に努めてきたことが認められる。 ㈣ こうした本件変更条項の性質や必要性、同条項により契約者が被る不利益の程度、同条項により追加された本件手数料条項の目的・内容の相当性等を総合的に考量すると、本件変更条項が、契約者と事業者である被告との間の情報や交渉力の格差を背景として、契約者の法的に保護されている利益を信義則に反する程度に両当事者の衡平を損なう形で侵害しているということはできない。 ㈤ 以上によれば、本件変更条項が、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるということはできない。③ 結論以上によれば、本件変更条項が法第10条に規定する消費者契約の条項であるとはいえない。

Classification
中立的な公的活動
Record nature
中立的な公的活動
Event type
consumer_injunction_publication
Event date
2018年4月19日
Announced
未収録
Effective from
未収録
Effective to
未収録
Record status
終了
Status as of
未収録