公表内容
事案の内容:本件は、原告が、自動車販売業者である株式会社SOUWA(以下「被告」という。)に対し、被告が不特定かつ多数の消費者との間で自動車販売契約を締結するに際して使用している書面には消費者契約法(以下「法」という。)第9条第1号(※)の規定に該当する条項(以下「差止請求条項」という。)が含まれているとして、法第12条第3項の規定に基づき、差止請求条項を内容とする意思表示の停止及び差止請求条項が記載された用紙の廃棄並びにこれらを従業員に指示する措置を採ることを求めた事案である。(差止請求条項)① 本件解約料条項 契約後のキャンセルは原則できません。購入者の一方的なキャンセルにつきましては、キャンセル料(契約額の30%)の支払を申し受けます。② 本件損害賠償条項 契約が解除されたときは、乙(注文者)は甲(販売店)に対し直ちに自動 車代金等に相当する額の損害賠償金及びこれに対する(ただし書の場合は、各号の金額を控除した額に対する)商事法定利率による遅延損害金を支払います。ただし、下記各号に該当する場合、甲はその金額を前記損害賠償金の支払に充当するものとします。 ⑴ 乙が甲に頭金及び残代金の一部を既に支払っているときはその合計額。 ⑵ 自動車が返還された場合(甲が乙に自動車を提供したが、乙が第2条に違反したため自動車の引渡しができなかったときを含む。)は財団法人日本自動車査定協会による査定評価額及び乙に支払う消費税・地方消費税が生じた場合はその額。ただし、乙が任意に自動車を返還しないため、甲が仮処分その他自己の費用をもって自動車を回収した場合、甲が自動車の評価額から回収費用を差し引くことができるものとします。(※)消費者契約法(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。 一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分 二 〔略〕(注)上記の訴えが提起された日現在の規定 結果:熊本地方裁判所は、令和元年5月8日、以下のように判断した上で、原告の請求をいずれも棄却した(原告は、令和元年5月20日付けで福岡高等裁判所に控訴した。)。 当該裁判の主たる争点:ア 主たる争点 差止請求条項が法第9条第1号に規定する消費者契約の条項であるといえるか。イ 主たる争点についての裁判所の判断 ① 法第9条第1号の「平均的な損害」の意義㈠ 法第9条第1号の趣旨は、消費者が、違約金等条項が存在しない場合に民法第416条により負担すべき損害賠償の額に比して、違約金等条項により不当に過大な義務を課されるおそれを防止することにあると解される。そうすると、法第9条第1号の「平均的な損害」と民法第416条の「通常生ずべき損害」は本質的に異なるものではなく、「平均的な損害」の額とは、当該事業者が一定の類型の消費者契約について消費者の債務の不履行によって解除権を行使する場合に、民法第416条により消費者に賠償を請求することができる損害額の平均を合理的に算出した額をいうものと解される。 したがって、「平均的な損害」には当該事業者の一定の類型の消費者契約について合理的に算出した平均的な逸失利益が含まれるというべきである。㈡ もっとも、具体的な消費者契約の性質やその締結に関する実情により、事業者が消費者による解除を織り込んで事業を運用していると解される場合には、事業者が消費者に請求できる損害賠償の範囲が民法第416条の定める範囲よりも制限される場合もあり得ると考えられる。しかしながら、被告が買主による解除を織り込んで自動車販売業を運用しているとは認められない。㈢ 事業者が、消費者契約を消費者の債務不履行によって解除した場合に、当該契約の目的を他の契約に代替ないし転用できるか否かによって、民法第416条の「通常生ずべき損害」に逸失利益が含まれるか否かに差異が生じるものではないから、法第9条第1号の「平均的な損害」についても、消費者契約の目的を他の契約に代替ないし転用できるか否かによって逸失利益が含まれるか否かに差異が生じるとは解し難い。 もっとも、事業者が、消費者契約を消費者の債務不履行によって解除した場合に、解除によって事業者が利益を得たときは、当該利益は損益相殺の対象となると考えられ、事業者が締結できる契約の数が限られているなどの事情により、締結した契約の解除によって新たに契約を締結できる機会が増加したと評価できる場合には、新たに契約を締結できる機会を得たことが損益相殺の対象となると解する余地もないではない。しかしながら、被告は締結した自動車販売契約の解除によって新たに契約を締結できる機会が増加したと評価することはできない。したがって、被告における自動車販売契約の解除によって、被告が損益相殺の対象となる利益を取得することはできない。㈣ 以上によれば、法第9条第1号所定の「平均的な損害」には平均的な逸失利益が含まれ、被告が締結する自動車販売契約における「平均的な損害」の額は、被告が締結する自動車販売契約における平均的な逸失利益の額を下回ることはない。 ② 本件解約料条項が法第9条第1号に該当するか 法第9条第1号の「平均的な損害」及びこれを超える部分については、消費者契約の条項が同号に該当して無効であると主張する者において主張立証責任を負うべきところ、原告は、被告の平均的な逸失利益についての具体的な主張立証を行わない。 そうすると、本件解約料条項の定めるキャンセル料が、被告が締結する自動車販売契約における「平均的な損害」の額を超えるものとは認められないから、本件解約料条項が法第9条第1号に該当するということはできない。 ③ 本件損害賠償条項が法第9条第1号に該当するか 本件損害賠償条項は、買主に帰責性のある事由により契約が解除された場合の損害賠償の額が民法第416条の「通常生ずべき損害」の額であることを前提として、「財団法人日本自動車査定協会による査定評価額」をもって車両の評価額とすることを予定するに過ぎないものと考えられ、原告は「財団法人日本自動車査定協会による査定評価額」が平均的な車両の評価額を下回る旨の主張立証を何ら提出しないから、この点をもって本件損害賠償条項が法第9条第1号に該当するとは認められない。 原告の主張の主眼は、法第9条第1号の「平均的な損害」に含まれる損害の範囲は民法第416条の「通常生ずべき損害」に含まれる損害の範囲とは異なるとの解釈を前提として、損害賠償の額が民法第416条の「通常生ずべき損害」の額であることを確認する条項も法第9条第1号の違約金等条項であって、「平均的な損害」の額を超える部分は無効であるという点にあると解されるが、上記解釈を採用できないのは上記①のとおりである。 ④ 結論 よって、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとする。
- Classification
- 中立的な公的活動
- Record nature
- 中立的な公的活動
- Event type
- consumer_injunction_publication
- Event date
- 2019年5月8日
- Announced
- 未収録
- Effective from
- 未収録
- Effective to
- 未収録
- Record status
- 終了
- Status as of
- 未収録