公表内容
事案の内容:本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人消費者機構日本(以下「消費者機構日本」という。)が、株式会社ロイヤルエンタープライズ(以下「ロイヤルエンタープライズ」という。)に対し、ロイヤルエンタープライズが作成した賃貸借契約書に含まれる各条項(以下「本件条項」という。)に関して、消費者契約法(以下「法」という。)第8条及び第10条(※)に規定する消費者契約の条項に該当するとして、以下のとおり申し入れた事案である。 以下、本件条項を引用した部分で、「甲」は賃貸人、「乙」は賃借人を指す。 ア 契約の即時解除に係る条項のうち、「乙が、銀行取引停止、差押えや競売等の強制執行・仮差押・仮処分等の申立てを受けた場合、又は、乙が破産手続開始・民事再生手続開始・会社更生手続開始・特別清算開始の各申立てを受け若しくは自ら各申立てを行った場合」とする箇所。 賃貸借契約において信頼関係の破壊が認められないときに契約の解除を認めることは、明らかに消費者の居住の権利を侵害するものであり、法第10条の第1要件を満たす。また、消費者の生活の本拠を奪うことになるため、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものといえ、同条の第2要件も満たす。イ 契約の終了に係る「本契約が、解除・解約等その他事由の如何を問わず終了した場合、乙は、甲に対して、移転料・立退料・損害賠償金等の請求を一切しないものとする(但し、甲の責めに帰すべき事由により本契約が終了した場合において甲が法律上損害賠償義務を負う場合にはこの限りではない)。又、乙は本物件の明渡しに際し、その事由及び名目の如何を問わず、本物件及び造作設備について支出した諸費用の償還請求等の一切の金銭請求をすることができず、本物件内に乙の費用をもって設置した造作設備の買取りを甲に請求することはできない。」との条項のうち、「甲の責めに帰すべき事由により本契約が終了した場合において」とする箇所。 賃貸人が法律上損害賠償義務を負う場合には、賃借人は賃貸人に対して損害賠償請求を行うことができることが原則であるが、当該箇所は損害賠償等の請求ができる場合について、「甲の責めに帰すべき事由により本契約が終了した場合」との要件を必要として二重の縛りをかけている。これは消費者の権利を制限する条項といえ、法第10条の第1要件を満たす。また、消費者が請求できるはずであった損害賠償請求権の行使ができなくなることから消費者の利益を一方的に害するものといえ、同条の第2要件も満たす。 ウ 「その他の注意事項」として「入居中に甲の責任による事なく、周辺環境の変化により日照・騒音等の悪影響、又は近隣に建築された建物によって、テレビ映りや音響機器への悪影響がでたとしても、乙は甲に対し、賃料の減額、その他如何なる請求もできないものとする(但し、法律上、乙に賃料減額請求権が認められる場合には、この限りではない)。」とする条項。 周辺環境の変化による日照の悪影響等が賃貸人の責任でないとしても、賃貸人には賃借人に対し賃借物を使用収益させる義務があり、適切な使用収益に堪えない悪影響が生じた場合には賃貸人にはこれを改善する義務がある。当該条項はこうした改善を求める賃借人の権利を制限するものであるため、法第10条の第1要件を満たす。また、賃借人は悪影響が生じた環境において生活をしなければならないこととなり、消費者の利益を一方的に害するものといえるため法第10条の第2要件も満たす。 エ 「その他の注意事項」として、賃借人及び同居人等は、本物件の立地・本物件外部及び内部の形状・構造等を全て承諾の上本契約を取り交わすものとする条項のうち、「よって、以後甲又は管理業者に対して、甲又は管理業者の責に帰することの無い立地や環境又は本物件の形状・近隣各室からの生活上の物音や声、間取り、あるいは使用している材料・材質及び棚や建具の取り付け方等に異議申し立ては一切できないものとする。」とする箇所。 賃貸人は中心的な義務として賃借物を使用収益させる義務(民法第601条)、これに派生する義務として修繕義務(民法第606条第1項)を負っており、契約時には判明していなかった立地等の不具合が生じた場合には賃借人は賃貸人に対し、賃借物を使用収益に足るよう求め、また必要であれば修繕を求めることもできる。当該箇所はこうした消費者の権利を制限するものといえ、法第10条の第1要件を満たす。また、賃貸人の中心的な義務を履行しないことは賃借人の利益を大きく損ねることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものといえるため法第10条の第2要件も満たす。 オ 管轄の裁判所等につき「甲又は管理業者が何らかの対応(訴訟提起を含むが、これに限られない)を行った場合、かかる対応に要した一切の費用等(合理的な弁護士費用・裁判費用等を含むが、これらに限られない)は全て乙の負担とする。」とする条項のうち、弁護士費用を賃借人の負担とする箇所。債務不履行に基づく損害賠償請求において、弁護士費用の賠償は最高裁判例において認められていない。我が国では弁護士強制主義が採用されておらず、弁護士に依頼した費用も請求できるとすることは消費者の義務を加重するため、法第10条の第1要件を満たす。また、賃料滞納額の多寡を問わずに賃貸人が依頼した弁護士費用をそのまま認めることは信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであり、法第10条の第2要件を満たす。よって、当該箇所は法第10条により無効である。 カ 「駐輪場及び駐車スペースの利用」に係る条項のうち、本物件敷地内及び隣接 道路等に賃借人が賃貸人又は管理業者の承諾なく自転車等を駐輪等した場合には、賃貸人又は管理業者は自転車等を撤去及び処分するものとするとし、「前項に従い撤去した自転車等(以下「撤去車両」という)について、甲又は管理業者は、いかなる場合も損害賠償等一切の責任を負わない。」とする箇所。 自転車等の撤去は自力救済に該当し違法と考えられる。当該箇所は賃貸人による不法行為に基づく損害賠償責任の全部免責条項に該当し、法第8条第1項第3号に該当する。 キ 「契約期間中の修繕」に係る条項のうち、賃借人は本物件内に修繕を要する箇所を発見したときは直ちに賃貸人又は管理業者に通知等することとして「又、この通知を行わず、乙が修繕を行った場合、かかる修繕が乙の責めに帰すべき事由により必要になったものかを問わず、当該修繕に要した費用は乙の負担とする。」とする箇所。 賃貸人は賃貸借契約の中心的な義務として賃借物を使用収益させる義務(民法第601条)と修繕義務(民法第606条第1項)を負い、賃貸人が本来負担すべき費用を賃借人が支出した時には賃借人には費用償還請求権(民法第608条)が認められているところ、当該箇所はこうした消費者の権利を制限するため、法第10条の第1要件を満たす。また、上記義務は賃貸人の中心的な義務であり、これを履行しないことは賃借人の利益を大きく損ねることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものといえ法第10条の第2要件を満たす。よって、当該箇所は法第10条により無効である。 (※)消費者契約法 (事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項四 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項2 (略)(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。注)上記の差止請求が行われた日現在の規定 結果:消費者支援機構日本は、令和4年1月22日にロイヤルエンタープライズから本件条項について削除又は修正する旨の回答を受けた。これを受け、消費者機構日本は、申入れの趣旨に沿う対応がなされたものとして、同年3月11日、申入れを終了した。
- Classification
- 中立的な公的活動
- Record nature
- 中立的な公的活動
- Event type
- consumer_injunction_publication
- Event date
- 2022年3月11日
- Announced
- 未収録
- Effective from
- 未収録
- Effective to
- 未収録
- Record status
- 終了
- Status as of
- 未収録