公表内容
事案の内容:本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人埼玉消費者被害をなくす会(以下「原告」という。)が、国内外の宿泊施設及び航空券等の検索・予約をインターネット上のプラットフォーム(以下「本件プラットフォーム」という。)を通じて行うことができるサービス「アゴダ(agoda)」(以下「本件サービス」という。)を提供するAgoda Company Pte. Ltd.(以下「被告アゴダ社」という。)及び被告アゴダ社の日本法人であるAgoda International Japan株式会社(以下、被告アゴダ社と併せて「被告ら」という。)に対し、被告らが消費者との間で本件サービスの利用契約を締結するに際して使用する利用規約(以下「本件利用規約」という。)の下記条項(以下「本件条項」という。)が、消費者契約法(以下「法」という。)第8条第1項各号又は第10条(※1)に規定する消費者契約の条項に該当し、無効であるとして、被告らが消費者との間で本件サービスの利用契約を締結するに際し、本件条項を含む契約の意思表示を行わないこと等を求めた事案である(令和5年12月6日付でさいたま地方裁判所に対して訴訟を提起)。 (本件条項) ① 本件プラットフォーム及び本件サービスの品質・結果についてあらゆる保証を否定した上で、消費者に生じた損害に関して被告アゴダ社の賠償責任を全部免除する旨を定める条項 ② 債務不履行、不法行為に限らずいかなる法的根拠によっても、関連する第三者も含む被告らが損害賠償責任その他一切の法的責任を負わない旨を定める条項 ③ 消費者が宿泊施設等の関係者から被った損害について、被告アゴダ社が負う可能性のある共同不法行為等に基づく損害賠償責任を全部免除する旨を定める条項 ④ 本件サービスの債務不履行及び債務の履行の際にされた不法行為による損害賠償責任について、被告アゴダ社に故意又は重過失がある場合にも被告アゴダ社の責任を一部免除する旨を定める条項 ⑤ 被告アゴダ社の賠償責任の全部又は一部の免除について、本件利用規約に定める救済措置が違法である場合でも賠償責任の全部又は一部の免除に消費者が同意する旨を定める条項 ⑥ 被告アゴダ社による過大請求又は誤請求があった場合の返金に関して、消費者に「可能な限り早く」申し立てることを要求し、「不当に遅れて」申し立てた消費者による請求は無効とみなされる場合がある旨を定める条項 ⑦ 被告アゴダ社が消費者の予約リクエストを理由なく拒否することができる旨及び既に成立した契約の効力を理由なく否定できる旨を定める条項 ⑧ 被告アゴダ社の裁量により、消費者の不当利得返還請求権を消滅させることができる旨を定める条項 ⑨ 消費者に対して、被告アゴダ社及びその関連会社らとの関係で、消費者に故意・過失がある場合に限らず極めて広汎な責任原因を規定し、弁護士費用も含めた損害賠償額の補償等を求める旨を定める条項 (理由) ア 本件条項①は、本件プラットフォーム及び本件サービスの品質・結果についてあらゆる保証を否定した上で、本件プラットフォームの情報や広告素材、サービス中断や被告らが送信するメールのウイルス等に起因して生じた消費者の損害に関しても、被告アゴダ社の賠償責任を全部免除するものである。被告らによる本件プラットフォーム及び本件サービスの適切な提供は、本件サービスの利用契約の要素たる債務であり、債務の本旨に従った履行がされない場合や、被告らが債務を履行する際に不法行為を行った場合についてまで被告アゴダ社の責任を全部免除する本件条項①は、法第8条第1項第1号及び第3号に該当し、無効である。 イ 本件条項②は、関連する第三者も含む被告らが債務不履行、不法行為に限らずいかなる法的根拠によっても損害賠償責任その他一切の法的責任を負わないとする内容であり、被告らの債務不履行責任及び債務の履行に際してされた不法行為責任を全部免除するものであることから、法第8条第1項第1号及び第3号に該当し、無効である。 ウ 本件条項③は、消費者が宿泊施設等の関係者から被った損害について、被告アゴダ社が法律上負う可能性のある共同不法行為等に基づく損害賠償責任を全部免除するものであり、法第8条第1項第3号に該当し、無効である。 エ 本件条項④は、本件サービスの債務不履行及び債務の履行の際にされた不法行為による損害賠償責任について、被告アゴダ社に故意又は重過失がある場合にも責任を一部免除するものであり、法第8条第1項第2号及び第4号に該当し、無効である。 オ 本件条項⑤は、被告アゴダ社の賠償責任の全部又は一部の免除について、本件利用規約に定める救済措置が違法である場合でも被告アゴダ社の賠償責任の全部又は一部の免除に消費者が同意するという内容である。上述の各条項の内容と相まって、本件条項⑤は、被告アゴダ社の賠償責任を全部又は一部を免除するものといえることから、法第8条第1項各号に該当し、無効である。 カ 本件条項⑥は、消費者が返金を「可能な限り早く」申し立てることを要求し、「不当に遅れて」申し立てた請求は無効とみなされる場合があるとの文言を用いているところ、「可能な限り早く」、「不当に遅れて」との文言からは、数週間ないし数か月といった程度の期間と解するのが通常であり、少なくとも民法第166条所定の期間であると読み取ることはできないから、任意規定に比して消費者の権利を制限するものである。また、前記のような文言は、極めて抽象的かつ消費者が権利行使可能な期間を読み取ることができないものであり、これにより消費者の不当利得返還請求を抑制し消費者の不当利得返還請求権の行使を一切許さないとする効果も重大であるといえる。そのため、本件条項⑥は、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるといえ、法第10条に該当し、無効である。 キ 本件条項⑦は、被告アゴダ社において、㋐本件サービスの利用契約に基づく予約リクエストを理由なく拒否することができる旨及び㋑既に成立した契約の効力を理由なく否定できる旨を定めるところ、このような定めは、任意規定に比して消費者の契約に基づく権利を制限するものである。 ㋐につき、理由なく予約リクエストを拒否することは、他の消費者と合理的理由なく差別するものであり、㋑につき、一般的に、消費者は予約が理由もなくキャンセル等されることはないと信頼して旅行計画を立てており、かかる信頼は強く保護されるべき利益であって、被告アゴダ社による理由のないキャンセル等は、旅行計画が白紙になったり、再度計画に応じた宿泊施設や航空券を高額な代金で手配しなければならなくなったりするなど、消費者へ及ぼす実際上の不利益は著しい。そのため、本件条項⑦は、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるといえ、法第10条に該当し、無効である。 ク 本件条項⑧は、被告アゴダ社の裁量により消費者の不当利得返還請求権を消滅させるものであり、任意規定に比して消費者の権利を制限するものである。そして、本件条項⑧は、被告アゴダ社の無制限な裁量によって、解約された契約にかかる支払済み代金の返金を受けるという消費者の当然の権利を全部はく奪するものであり、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものといえることから、法第10条に該当し、無効である。 ケ 本件条項⑨は、消費者に故意・過失がある場合に限らず、極めて広汎な責任原因を規定し、任意規定に比して消費者の義務を加重するものといえる。そして、本件条項⑨は、被告らについて広汎な免責及び損害賠償額の制限を規定している一方で、消費者に対しては広汎な責任原因と被告らが賠償義務を負わないと規定する損害まで賠償の範囲に含めるなど、甚だしい不均衡を生じさせているといえることから、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるといえ、法第10条に該当し、無効である。 (※1)消費者契約法 (事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効) 第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。 一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項 二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項 三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項 四 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項 2・3 [略] (消費者の利益を一方的に害する条項の無効) 第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。 (注)上記の訴訟が提起された日現在の規定 結果:本件において、令和8年7月16日、原告と被告らとの間で、別紙のとおり裁判上の和解が成立した。
- Classification
- 中立的な公的活動
- Record nature
- 中立的な公的活動
- Event type
- consumer_injunction_publication
- Event date
- 2026年7月16日
- Announced
- 未収録
- Effective from
- 未収録
- Effective to
- 未収録
- Record status
- 終了
- Status as of
- 未収録