公的活動2021年7月27日

佐賀消費者フォーラムと株式会社平安閣エヌピーオー互助会との間の訴訟に関する控訴審判決の確定について

株式会社平安閣エヌピーオー互助会

消費者庁・公式記録ID case-382-2

公表内容

事案の内容:本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人佐賀消費者フォーラム(以下「控訴人」という。)が、冠婚葬祭の互助会を運営する株式会社平安閣エヌピーオー互助会(以下「被控訴人」という。)に対し、被控訴人が不特定かつ多数の消費者との間で締結する、消費者が将来行う冠婚葬祭に備え、所定の月掛金を前払で積み立てることにより冠婚葬祭に係る役務等の提供を受ける権利を取得し、被控訴人が当該消費者の請求により冠婚葬祭に係る役務サービス等を提供する義務を負うことを内容とする契約(以下「本件契約」という。)に適用される契約約款中、契約期間中に消費者が解約したときの返戻金額を支払済みの月掛金残高から所定の手数料を差し引いた金額とする旨の条項(以下「本件解約金条項」という。)は、消費者契約法(以下「契約法」という。)第9条第1号及び第 10 条(※1)の規定に該当して無効であると主張して、契約法第 12 条第3項の規定に基づき、①解約時に支払済金額から解約金を差し引いて消費者に対し返金することを内容とする意思表示の差止め、②本件解約金条項が印刷された契約書ひな形の廃棄、並びに③①の内容の意思表示を行うための事務を行わないこと及び②の契約書ひな形を破棄すべきことを被控訴人の従業員らに指示することを求めた事案である。 原判決(佐賀地方裁判所が令和元年6月 14 日に言渡し)が、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人が控訴し(同月 26 日付けで福岡高等裁判所に控訴)、本件契約のうち、特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)に規定する訪問販売に該当するものについて、特商法第 58 条の 18 第2項第2号(※2)の規定に基づく差止請求を追加した。(※1)消費者契約法(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。 一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分 二 〔略〕(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)第十条 民法、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。 (※2)特定商取引に関する法律(訪問販売に係る差止請求権)第五十八条の十八 〔略〕2 適格消費者団体は、販売業者又は役務提供事業者が、売買契約又は役務提供契約を締結するに際し、不特定かつ多数の者との間で次に掲げる特約を含む売買契約又は役務提供契約の申込み又はその承諾の意思表示を現に行い又は行うおそれがあるときは、その販売業者又は役務提供事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為に供した物の廃棄若しくは除去その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。 一〔略〕 二 第十条の規定に反する特約(注)上記の訴訟が提起された日現在の規定 結果:福岡高等裁判所は、令和2年5月 27 日、以下のように判断した上で、控訴人の請求を一部認容して、原判決を変更する判決を下した(控訴人は、同年6月9日付けで上告受理申立てを行い、被控訴人は、同月8日付けで上告及び上告受理申立てを行った。)。 令和3年7月27日に、各々申立て不受理の決定がされ、差止請求を一部認容した控訴審判決が確定した。 当該裁判の主たる争点:ア 主たる争点 ⅰ)本件契約(訪問販売に該当するものを除く。)の解約により生じる平均的な損害の額 ⅱ)本件契約のうち訪問販売に該当するものに係る契約の締結及び履行のために通常要する費用の額 ⅲ)本件解約金条項は契約法第 10 条の規定に該当し無効であるか イ 主たる争点についての裁判所の判断の概要 【争点ⅰ及びⅱについて】⑴ ㈠ 契約法第9条第1号の「平均的な損害」とは、当該事業者が締結する多数の同種契約事案について類型的に考察した場合に算定される平均的な損害の額をいい、具体的には、解除の事由、時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約の解除に伴い、当該事業者に生じる損害の額の平均値をいうものと解される。 本件においては、会員から冠婚葬祭の施行の請求がされる前に会員によって本件契約が解約される場合に、解約に伴い被控訴人に生じる損害の額の平均値が問題となるところ、上記損害は、解約に伴い生じるものに限られるから、解約との間に相当因果関係が認められる必要があるというべきである。そして、損害の額の平均値については、被控訴人が基準年度に支出した費用を基に、契約1口当たりの損害額を算出するのが相当である。 ㈡ 上記の観点から、被控訴人が本件契約に関して支出する費用についてみると、これらの費用のうち、契約締結に要する費用及び会員管理に要する費用は、基本的には、個々の契約との関係で支出が必要となる費用であり、当該契約が解約された場合には被控訴人にとって無駄な支出となってしまうものであるから、解約と相当因果関係のある損害と認められる。また、解約手続に要する費用が解約と相当因果関係のある損害に当たることは当然のことである。 ㈢ 他方、会員募集に要する費用は、被控訴人の事業運営の一環としての営業活動に要する費用であって、個々の契約の締結の有無にかかわらず生じるものであるから、解約との間に相当因果関係を認めることはできず、解約に伴い被控訴人に生じる損害には含まれないというべきである。 ⑵ 前記⑴を前提に、本件契約の解約に伴い被控訴人に生じる平均的な損害を具体的に検討すると、次のとおりとなる。 ㈠ 契約締結前の会員募集に要する費用(別紙1記載番号1-3(⑴及び⑵を除く。)、1-4(⑴を除く。)、1-8、1-10、1-11(⑴及び⑵を除く。)、1-12(⑴及び⑵を除く。)1-15~1-17、1-18①)は、個々の契約の締結の有無にかかわらず生じるものであって、個々の契約の解約に伴い無駄になるとはいえず、解約に伴い被控訴人に生じる損害には含まれない。 これらの費用のうち、契約締結に至った会員の募集に要する費用(同1-3⑶、1-4⑵、1-8、1-16、1-17)に限っても同様である。 ㈡ 契約締結に要する費用(別紙1記載番号1-1、1-2、1-3⑴及び⑵、1-4⑴、1-5~1-7、1-9、1-11⑴、⑵、1-12⑴、⑵、1-13、1-14)は、いずれも個々の契約の解約に伴い無駄なものとなるから、同費用を年間新規加入契約口数 5,673 口で除したものが解約に伴い被控訴人に生じる平均的な損害となる。 また、契約約款、入会申込書、加入者証等の印刷代(同1-19)、加入者証郵送料(同1-20)も、契約締結に要する費用であり、契約の解約に伴い被控訴人に生じる平均的な損害に含まれる。 他方、営業用建物は契約締結に関する業務にも使用されているもののその使用に要する費用(同1-18)は個々の契約の締結の有無にかかわらず生じるものであるから、解約に伴い被控訴人に生じる平均的な損害に含まれるとはいえない。 ㈢ 会員管理に要する費用(別紙2記載番号2-1~2-5、2-10、2-12~2-14、2-17、2-18、2-20、2-21)は、個々の契約との関係で支出が必要となる費用であって、個々の契約の解約に伴い無駄なものとなる。このうち月掛金の集金に要する費用(同2-1)を年間口座振替請求件数 40 万 1903 件で除したもの及びその余の費用を平成 27 年4月末日時点の契約口数 21 万 6497 口で除したものを月割りにしたものの合計が、入会期間1か月につき被控訴人に生じる平均的な損害となる。なお、上記の費用に、被控訴人のグループとしての業務に係るものや A 株式会社(被控訴人が、本件契約に基づいて役務等を提供するに当たり、施行を委託している会社)の業務に係るものが含まれていると認めるに足りる証拠はない。 他方、営業用建物を会員管理に関する業務に使用することに要する費用(同2-22) は、個々の契約の締結の有無にかかわらず生じるものであるから、個々の契約の解約に伴い被控訴人に生じる平均的な損害に含まれるとはいえない。また、会員募集に要する費用のうち契約に至った会員の分を除いたもの(同2-6~2-9、2-11、2-15、2-16、2-19、2-23)は、個々の契約の締結の有無にかかわらず生じるものであり、本件契約の性質、内容を踏まえても、解約との間に相当因果関係が認められないことに変わりはなく、会員管理に要する費用として解約に伴い被控訴人に生ずる平均的な損害に含まれるとはいえない。 ㈣ 解約手続に要する費用(別紙3記載番号3-1~3-6)は、個々の契約の解約に伴い支出を要するものであるから、同費用を年間解約口数5,829 口で除したものが解約に伴い被控訴人に生じる平均的な損害となる。また、解約手続に要する書類の印刷代(同3-7、3-8)も、解約手続に要する費用であり、1口当たりの印刷代が解約に伴い被控訴人に生じる平均的な損害となる。 ㈤ そうすると、本件契約の解約に伴い被控訴人に生じる平均的な損害は別紙1から3までの各「当裁判所の判断」欄記載のとおりであり、 契約締結に要する費用1万 6149 円及び解約手続に要する費用 5,312 円の合計2万 1461 円に入会期間1か月につき会員管理に要する費用 122 円を加えた額となる。⑶ そして、以上に検討したところによれば、本件契約のうち訪問販売に該当するものに係る契約の締結及び履行のために通常要する費用の額は、前記の平均的な損害の額と結果的に一致する。⑷ 小括 以上から、本件解約金条項は、消費者が冠婚葬祭の施行を請求するまでの間に解約する場合、支払済金額から2万 1461 円及び入会期間1か月につき5122円を加えた額を超える解約金を差し引いて消費者に返金する旨を定める部分について無効である(本件契約のうち訪問販売に該当するものについて契約法第 11 条第2項、特商法第 10 条第1項第4号、その余の契約について契約法第9条第1号)。 【争点ⅲについて】 前示のとおり、本件解約金条項のうち、訪問販売に該当するものに係る契約の締結及び履行のために通常要する費用の額並びにその余の契約に係る平均的な損害の額を超える部分は特商法第 10 条第1項第4号及び契約法第9条第1号の規定によって無効とされるところ、本件解約金条項の内容に照らすと、その余の部分が契約法第 10 条の規定に該当するとはいえない。 【結論】 以上の次第で、控訴人の請求は、契約法第 12 条第3項及び特商法第 58 条の 18 第2項第2号に規定する差止請求権に基づき、被控訴人に対し、消費者との間で冠婚葬祭の互助会契約を締結するに際し、①消費者が冠婚葬祭の施行を請求するまでの間に解約する場合、解約時に支払済金額から2万 1461円及び入会期間1か月につき 122 円を加えた額を超える解約金を差し引いて消費者に返金する旨を内容とする意思表示を行ってはならないこと、②上記の内容の条項が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙を廃棄すること並びに従業員らに上記の意思表示を行うための事務を行わないこと及び③上記の契約書用紙を廃棄することを指示すること、を求める限度で理由があるから同限度で認容し、その余の請求は理由がないから棄却すべきところ、これと異なる原判決は一部不当であるから、本件控訴は一部理由がある。

Classification
中立的な公的活動
Record nature
中立的な公的活動
Event type
consumer_injunction_publication
Event date
2021年7月27日
Announced
未収録
Effective from
未収録
Effective to
未収録
Record status
終了
Status as of
未収録