公表内容
事案の内容:本件は、適格消費者団体である特定非営利活動法人京都消費者契約ネットワーク(以下「原告」という。)が、電気通信事業等を目的とするKDDI株式会社(以下「被告」という。)に対し、被告が不特定かつ多数の消費者との間で、携帯電話利用サービス契約を締結する際に現に使用しており、今後も使用するおそれのある、消費者が2年間の定期契約(以下「本件定期契約」という。同契約は、契約期間の満了日の翌日に自動的に更新される。)を契約期間の途中に解約する際に、一定の場合を除き、被告に9,975円の解約金を支払うことを定める契約条項(以下「本件解約金条項」という。)は消費者契約法(以下「法」という。)第9条第1号及び第10条により無効であるとして、当該条項の内容を含む契約締結の意思表示の差止めを求めた事案である(平成22年6月16日付けで、京都地方裁判所に対して訴えを提起)。 結果:京都地方裁判所は、平成24年7月19日、以下のとおり、原告の請求を一部認容した。 当該裁判の主たる争点:①本件解約金条項が法第9条第1号により無効であるか否か。 ②本件解約金条項が法第10条に反するか。 まず、争点①について、本件解約金条項は、本件定期契約の「解除に伴う損害賠償の額の予定」又は「違約金」に該当し、法第9条第1号が適用されるところ、同号は、債務不履行の際の損害賠償請求権の範囲を定める民法第416条を前提とし、その内容を定型化するという意義を有するから、同号にいう損害とは、民法第416条にいう「通常生ずべき損害」に対応するものであり、また、法第9条第1号が「平均的」という文言を用いたのは、解除の事由、時期等により同一の区分に分類される複数の契約の平均値を用いて、解除に伴い事業者に生じる損害を算定することを許容する趣旨と解されるから、同号の平均的損害の算定は、民法第416条に基づく損害の算定方法を前提とし、解除事由、時期等により同一の区分に分類される同種の契約における平均値を求める方法により行うべきである、とした。 そこで、本件定期契約の解約に伴う平均的損害を算定する際にも、民法の規律を参照し、中途解約されることなく契約が期間満了時まで継続していれば被告が得られたであろう通信料収入等(解約に伴う逸失利益)を基礎とすべきであるところ、1か月あたりの被告の解約に伴う逸失利益は、本件定期契約における1契約あたりの1か月の売上を表す数値から算定される5,000円から、中途解約に伴い被告が支出を免れる費用等に相当する同金額の20%を控除した4,000円であり、これに解約時から契約期間満了までの期間を乗じた額が、解約に伴い被告に生じる平均的損害となる、また、このような算定方法によると、解約時期の違いによって、平均的損害の額には著しい差異が生ずることなどから、本件定期契約においては、解約時期を1か月毎に区分して、各区分毎に、被告に生じる平均的損害を算定すべきである、このような平均的損害の算定方法は、更新前後で同様であると解する、とした。 そして、以上によれば、本件定期契約が締結又は更新された日の属する月から数えて23か月目以降に解約した場合は、被告に生じる平均的損害の額(23ヶ月目の解約の場合は8,000円、24か月目の解約の場合は4,000円)を超過する解約金(9,975円)の支払義務を定めることとなるから、本件解約金条項は、当該超過額の限度で法第9条第1号により無効である、とした。 次に争点②について、まず法第10条前段の該当性につき、民法等の「法律の公の秩序に関しない規定」は、明文の規定のみならず、一般的な法理等も含まれることを前提とし、「民法は、委任契約・準委任契約及び請負契約等の役務の提供を給付内容とする契約において、役務の提供を受ける者が、少なくとも、役務の提供者に生じる損害を填補する限り、不必要となった役務の受領を強いられることはないという一般法理を定めているといえる。」とした上で、本件解約金条項は、解約に伴い被告に生じる損害の有無及びその多寡にかかわらず、一律に一定の金員の支払義務を契約者に課す点において、解約に伴い相手方に生ずる損害の限度で、損害賠償請求権を認める上記一般法理と比較して、消費者の権利を制限し、義務を加重しているといえるため、法第10条前段の要件を満たすとした。 また、法第10条後段の該当性については、本件定期契約は2年間の定期契約であり、著しく長期間にわたり、契約者の解約を制限する規定とはいえないこと、解約に伴い被告が逸失する期間満了時までの通信料収入等を補填するという性格を有するものであること、9,975円という解約金の額は、法第9条第1号により無効とした部分を除いては、平均的損害を超過しない合理的な範囲の額にとどまること、本件解約金条項については、契約者に交付される説明書類・パンフレット等に一義的かつ明確に記載されており、被告と契約者の間には、明確な合意があったことなどを理由に、本件解約金条項のうち法第9条第1号により無効とした部分を除いては、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項とはいえず、法第10条後段に該当するとはいえないとした。他方、本件解約金条項のうち法第9条1号により無効とした部分については、その内容は合理性を欠くので、法第10条により無効であるとした。 なお、差止めの範囲について、本件解約金条項は一部無効の契約条項と解されるが、差止めの対象は、被告が現に使用する本件解約金条項を含む意思表示であって、被告が今後新たに解約時期等による区分がある解約金条項を使用することを想定して、一部無効となる範囲を明示した意思表示の差止めを求めることはできないと解する、とした。
- Classification
- 中立的な公的活動
- Record nature
- 中立的な公的活動
- Event type
- consumer_injunction_publication
- Event date
- 2012年7月19日
- Announced
- 未収録
- Effective from
- 未収録
- Effective to
- 未収録
- Record status
- 終了
- Status as of
- 未収録